男女別定員制の廃止

都教育委員会の発表

 都教育委員会は、来年1~2月に実施する2024年度入試から都立高校の男女別定員制を全廃する方針を固めました。男女別定員制とは、都立高校(単位制、コースを除く全日制普通科)の入試において男女それぞれで定員を設け、合否も男女別で判定する制度で、実は全国の公立高校で唯一東京都だけが実施していました。これに対して、以前から「男女平等に反する」などの批判があり、定員の一部を男女関係なく合格判定する(男女別定員制緩和措置)など、段階的な廃止を進めていました。それが今回、一部ではなく完全に男女別定員制を撤廃することになったのです。これで一般入試、推薦入試いずれの入試も、性別に関係なく成績順で全ての合格者を決めることになりました。

東京都特有の事情

 そもそも男女別定員制は戦後、公立学校の共学化に伴って全国で導入されたものです。それまでは女子が一般科目を学習する機会があまりなかったため、男子と同等の教育を受けられるようにするため、女子の合格枠を確保し、男女比を均衡させることが狙いでした。つまり、当時の社会状況としては、男女別にする必要性があったというわけです。しかし、その後時代が進み、男女の学力差が解消されていくと、このような制度は全国的に廃止が進みました。
 一方、東京には地方と異なる特殊な事情がありました。それは私立の女子校が多いということです。高度経済成長期の人口増加に伴い、都立や私立の高校の数は増えていきましたが、私立男子校に対して私立女子校の方がずっと多くなったため、男子より女子の方が進学先の選択肢が多いという状況になりました。そのため、男子が不利にならないよう、都立高校で受け入れる男子の数を確保する必要が生じたのです。このような経緯で(戦後の制度開始の時と全く逆の理由ではあるものの)、結果的に東京都では今まで男女別定員制が存続することになりました。

多くの問題点

 こうして続けられていた男女別定員制ですが、合格ラインを超えているのに性別を理由に不合格となる受験生が相次ぐなど、入試の公平性という点で多くの問題が出てきました。
 内申点は定期試験だけでなく授業態度や提出物などを加味して決定されるため、コツコツ真面目に勉強する女子のほうが高い傾向があります(もちろん個人差はありますが)。都立高校の入試では当日の試験の点数のほかに、内申点も合わせて総合的に判断されるので、内申点が高い分だけ女子の合格ラインは高くなり、競争が激化します。実際、2021年度入試では、男女の別なく成績順で選考されていれば合格していた受験生が、74校で計786人に上り、うち56校の計691人は女子でした。こうした状況を問題視する声が高まり、今回の男女別定員の撤廃に至ったというわけです。

必要とされる力

 東京都教育委員会は、男女合同定員になった場合の、男女の合否人数のシミュレーションを行いました。それによると、男女別定員の撤廃後、女子の合格者数は現行より600人増加し、男子は600人減少するという予想が出ています。学校によっては生徒の男女比が急激に偏ってしまうこともあるかもしれません。
 シミュレーションがどの程度当たるかは分かりませんが、内申点の男女差を考えると、これまでならギリギリ合格できていた男子が今後は不合格になってしまうことは容易に想像できます。前述のように、男子の受け入れ校が女子より少ない状況はあまり変わっていないので、男子にとっては入試の厳しさが増すことでしょう。ただ、今後の入試が厳しくなるというより、今までが守られすぎていたともいえます。要は日々の授業や勉強をコツコツ真面目にやって、しっかり内申点を取れるようにすればいいのです。偏差値が高いだけでは高校入試は突破できません。中1のうちから、(実技4科目も含めた)全教科の内申点を上げるためにどのような準備をしたらよいのか、試行錯誤しながら頑張って勉強しましょう。